久しぶりの透明度

南アルプスの方からの風が吹き、霞をすっかり吹き飛ばしてくれた。おかげでとても澄んだ空気になり、富士山もよく見えた。毎日晴れていた冬には見慣れた景色だったのに、久しぶりだと新鮮に見える。春分を過ぎた夕方の太陽の日差しは、冬場よりも北寄りから富士山を照らすので、よりいっそう綺麗な赤富士になった。
今日は愛宕山こどもの国で「桜まつり」という催しがあった。休憩時間に行ってみたら、いろいろな出店が出ている中にキャラメル味のポップコーンがあった。この味付けが出始めたのはいつ頃なのだろうか。少なくとも、僕が子どもの頃には無かった味だ。20年前にも無かったと思う。
こんなことを思い起こしているのは、僕がキャラメル味のポップコーンが大好きだから。僕がキャラメル味のポップコーンを初めて食べたのはまだ数年前のことで、こんな旨いもんがなぜ今まで無かったのだろうと思っている。それまではポップコーンは嫌いじゃないがポテトチップスの方がいいからそっちばかり食べていた。もしかして、20年前からあったよ、なんてことだったとしたら、僕は10数年間の間それを知らずにポテトチップスや塩味のポップコーンのみで過ごしてしまったのだから後悔することになる。
映画を見に行くと、この美味しさを知らない頃はポテロングなんかを食べていたが、今ではコーラとキャラメル味のポップコーンが近頃の僕の必需品になっている。次女もこれを好きなので、一応彼女に「何が食べたい?」なんて聞いて、「キャラメル味のポップコーン」と言わせてみる。映画館の椅子に腰を下ろしスクリーンに目をやりながら、手探りでポップコーンを取って口に運ぶ。映画館内でのホームメイドであるがため味付けが均一で無いので、それに少々気をとられる。スクリーンに集中しつつも、味が薄いものを取ってしまった時にはがっかりし、たっぷりとキャラメルが乗ったところを食べられたときには良い気分になる。
映画を見終わって余ったポップコーンはささやか過ぎるお土産となる。でも、長女はキャラメル味が好きではなく、バーベキュー味のそれが好みだそうだ。そんなものも20年前には無かったと思う。そういう意味では、今は良い時代だ。