ススキ野原

霧ケ峰の車山は斜面がススキで覆われている。10月に行けばご覧の通り白い綿毛を出した穂が一斉に風に揺れる景色を見ることができる。
写真の手前は日が当たっている明るい斜面。ススキの穂は光を乱反射させて白く輝き、黄色くなった葉は光を透過させて金色に見せている。一方、その向こうの斜面は日影。一面がススキのためのっぺりとした印象になり、ところどころにある低木がせめてものアクセントになっている。どちらも同じススキ野原だというのに、日の当たり方で印象が全く違ってしまう。しかも、時間によってはその立場が逆転することもあるだろう。同じものなのに、時によってこれほどのコントラストがついてしまう。
昨日のぴのきよ日記でちょっと書いた日本の家電メーカーの盛衰にも、似たようなものがあるかもしれない。「同じようなものを作っているのに、どうして我が社製品が売れないのか」「あのメーカーよりも我が社が先に作ったのに、真似したあのメーカーの方が売れている」「我が社の製品の方が性能が良いのになんであっちが評価される」そんなふうに思っているメーカーの人も少なくないのではないかと思う。あるいは、「これまで、市場調査をし、ニーズに合わせた商品を開発し、生産性を高めて価格を抑えてきた。それが我が社への信頼となって売り上げに繋がっていた。でも、今までと同じようにやっているというのに売り上げが上がらなくなった」というようなこともあるだろう。同じことをしているのに昔は日向、今はそれが日影になってしまった。僕ごときにその解決策など考え付くものではないが、そのむなしさは推し量ることができる。
人と人との間にも似たようなことがあって、頑張って真面目にやっている人が報われず評価されない反面、目立つことに血道をあげているアピール上手な人が高く評価されていることもよくある。気の毒であり悔しくもあるが、僕に出来るのはそのコントラストがかりそめであることを知ることぐらい。ススキ野原のように、時が日の当たる向きを変えてくれると良いが。