裏山の紅葉

我が家の裏山が見事な紅葉に染まっている。もちろん借景であるが、北側の窓を見るとこの景色が見える。意外にも窓の外にあったこの良い景色を見て、メーテルリンク作の「青い鳥」を思い出した。
山梨県は全周が国立公園や国定公園に囲まれているわけだから、紅葉の名所も数多い。昇仙峡、八ヶ岳の川俣川渓谷、瑞牆山、伊奈ヶ湖、尾白川渓谷、西沢渓谷、猿橋、、、。名立たる紅葉スポットはもちろん素晴らしいものだが、裏山もいい感じだ。「青い鳥」のメッセージは、幸福は案外身近なところにあるってことに気づいて無いんじゃないの?、というものだろうが、身近な紅葉にはばっちり気付いた。この小山は新緑もきれいだった。
ところで、僕が「青い鳥」を最初に読んだのは小学生の前半の頃だったと思う。誰かが買ってくれた世界名作童話集みたいなタイトルの本があって、その本の最後に収録されていた。母親が枕元で読み聞かせてくれたこともあっただろうし、挿絵を見ながら自分で読んだこともあった。ただ、どうしても最後のところが当時の僕には理解できなかった。幸せの青い鳥を探して彷徨い、そのグレートアドベンチャーの夢から覚めたら、見慣れたはずの自宅の鳥が捜し求めていた青い鳥だったというところだ。僕は実にくそまじめに、どうして青くなってしまったのだろう、と考えていたのだ。灰色の鳥は、一晩寝ても灰色のままに決まっていると思っていたのだ。
チルチルとミチルの旅に比べれば、僕のこれまでの人生は物語性に欠けるであろう。それでも50年も生きるといろいろと経験を積むことになる。そうすると歳を重ねる毎に、同じ場所や物が違った景色に見えてくることがある。そういう意味で考えると、人が半生をかけて感じることが出来る境地に、チルチルとミチルは月の精の力によって夢の中でタイムトリップし、わずか一夜で達することが出来たのだろう。僕はあと何年かかるだろうか。