桜と甲斐駒

穴山駅から少し歩くと、旧穴山小学校がある。廃校になった学校に漂う、共通の物寂しい雰囲気が流れていた。プールであっただろう場所は空き地になっているが、更衣室のような建物は残っている。すでに校舎は無く、公民館の新しい建物があったが、鍵が掛かっていた。体育館は健在で、地域では今も使われている様子だった。校庭の周囲、ここにも桜の巨木が何本もある。そして、校庭の向こうには甲斐駒ケ岳が見えていた。
校庭の隅に鉄棒を見つけた。低いのだけでなく高いのもあった。おっさんになって久しいこともあり、運動能力はとても落ちていまっているから、蹴上がりや逆上がりをしてみようという気にもならない。高い鉄棒につかまり、足を曲げてぶら下がってみた。背中の筋肉が引っ張られた。数秒ほどできつくなった。いつのまにか身体のあちこちに付いた肉の重さを感じる。やがて腕も痛くなった。そして、20秒も経たないうちに手を離してしまった。
校庭をぐるっと歩いてみた。デコボコに瘤が付いている桜の古木が並んでいる。大きなヒイラギもあった。背中や脇の筋肉に残る引っ張られた感触を引きづりながら、桜を見上げると、高く上った日の光が、老木の花々の間から眩しくこぼれた。