ドングリの穴


今日は良く晴れた。でも、台風の痕跡はあちこちにある。ちょっと歩いてみても、愛宕山には緑色の葉やドングリがたくさん落ちている。
ドングリを拾い上げてよく見てみたら、小さな穴が開いていることに気がついた。(写真上) いくつも拾ってみたけれど、穴が開いているドングリの方が、何も無いドングリよりも多いようだ。中には二つも穴が開いているものもあった。
ドングリの帽子に開いている穴は、0.5mmのシャーペンの芯よりも細いぐらいだ。(写真上) さて、こいつを部屋へ持ち帰って手術してみた。まずはカッターナイフで帽子を剥ぎ取ってみた。すると、帽子の下の本体にも穴が続いていた。(写真上から2番目) 帽子も硬いけれど本体はもっと硬い。良く開けたものだ。
穴の中はどうなっているのだろう。今度は穴のところから実をばっさりと切ってみた。すると、穴は本体の皮を突き破って身の中まで続いていた。そして中に入るとちょっと広く、部屋のようになっていた。(写真下から2番目)
別のドングリもばっさりとやってみた。そうしたら中にひとつだけタマゴが入っていた。(写真下)
調べてみると、この穴を開けたのは「シギゾウムシ」の種類らしい。ゾウムシというと、鼻先が長い甲虫だが、中でもシギゾウムシの仲間はぐっと長い。「象虫」という名前に恥じない立派な鼻だ。

硬いドングリに穴を開けるのにゾウムシは何時間もかけるということだ。中には途中で力尽きてしまう固体もあるらしい。なんでそんなにつらい思いをしてまで、、、。昆虫はカマキリのようにたくさんのタマゴを産む種類もいるけれど、生き残るのはその中のわずかだ。シギゾウムシの場合はごらんのように一つの穴にタマゴが一つだけ。だとすれば、このタマゴが孵化したときは周りにあるドングリの胚乳は全部独占できる。ドングリを食べるのはリスやクマなどだが、それ以外にはこんな硬いものを食べようとしない。だから、ドングリの中の幼虫は生き残りやすい。ドングリの外にいれば、鳥などにつかまりやすいから、中にいるのはとても安全で食料に取り囲まれている。死ぬ思いでドングリに穴を開けた親に感謝しなければならない。
産む数は少ないけれど、「安全なゆりかごを用意」して確実にそだってもらう。長いゾウムシの歴史の中で、「数打ちゃ当たる」式でたくさんのタマゴを産みつける種類の昆虫とは一線を画す生き残りの方法が磨かれたのだろう。