斜面に生えた木の根

谷川の最上流の更に上には、雨降りのときだけに水の流れがある普段は枯れた谷が続いている。そんな場所の斜面にも木はたくさん生えている。尾根に比べればむしろ水は得やすいのかもしれない。しかし、場所によっては写真のように足元をすくわれてしまう場合もあるようだ。すくわれた土は戻ってこないが、その先にある根はしっかり土を掴んでいるだろうか。この夏の台風には耐えられるだろうか。
という心配も悪くないが、山に蓄えられた栄養分が谷を下り、川に溶け込んで、やがて海に流れ込むということが、水産資源にとっては大切なことだという。ずっと前にプロジェクトXで見て以来、何度かそいういう本や記事や番組を見た。プロジェクトXで取り上げていたのは、たしか襟裳のウニを取り扱った内容だった。森がなくなって海が焼け、海草が育たなくなり、ウニが取れなくなった。ある人が森の復活を訴えた。でも、ウニと木に何の関係があるんだと言われ、一人ぼっちで始めた森の復活事業。やがて海に実りが戻ると、次々と賛同者が出て協力して森を復活させ、豊饒の海が戻ってきたという話。だったと思う。
そういえば、この季節の嫌われ者である黄砂にも同じような効果があるというのを読んだことがある。黄砂のミネラル成分などが、日本海や太平洋側の海の生き物たちにとって大切な養分になるというのだ。もしも黄砂が無かったら日本近海の漁獲高は何十%だか減るという。これはビックリ、迷惑だったはずのものが実はとても大切なものだった。それ以来、僕の黄砂に対する考え方が変わった。ただ、それを知ったとたんに思ったのは「黄砂に起因するその漁獲はわが国のものだ」と大きな隣国さんに言われる心配。まさかそんなことは無いと思うが。