ガガンボ

ガガンボというのだったか、刺さない大きな蚊がアパートの階段の壁に止まっていた。久しぶりに見るなぁ、と思って近くによって見ると、止まっているのではなくへばりついたまま死んでいるようだった。まるで動かない。
どうして此処を死に場所に選んだのだろうか。力尽きるまで飛んだ果ての地が此処だったのか。此処に止まった時に、偶然、人間で言えば脳梗塞や心臓発作のようなものが襲ったのか。それとも何かの重大な覚悟をしてここで餓死したのか。即身仏のように。