桑の実

甲州は絹の里だったから、桑の木が多い。ただし、もともとカイコ飼育のために育てていたはずの桑が、カイコをやめたために放置されている例もある。山梨県に引っ越してきたばかりの頃にはそんな景色が気になったが、16年経った今では、耕作放棄された田んぼや畑がもっとずっと多く目に付くので心配になる。こっちの方の問題は、山梨県だけでなく日本全体の困り事だ。少子化が原因だと言う人が多いが、僕は違うと思う。農業委員会や地籍などの制度に大きな問題の一つがある。
明治の山梨経済を支えた養蚕業は衰退の一途を辿り、今でも養蚕をする人がわずかに居られるそうだが、産業と言えるほどの規模とは言えない。農業の場合も、新規参入をことさら阻むような制度を放置したままでは、養蚕業が辿ったような未来がありそうで怖い。