イチジク

イチジクの実がたくさん付いたままの枝を頂いた。独特だな。イチジクは「無花果」と書くようだが、花はこの実の内側に向かってたくさん咲いている。つまり、イチジクの実というよりもイチジクの花房と言った方が正確に近そうだ。
僕は子供の頃にイチジクを食べる機会は多かったのだが、十代後半からは見る機会すらほとんど無くなり、山梨県に来てからも見ることはありながらも食べたのは四十代になってからのことだった。ただ、味覚が変わってしまったのか別の原因なのかはわからないが、子供の頃の記憶ほどには美味しさを感じない。非常に甘い味とねっとり且つざらっとした舌触りが大好きだったはずなのだが、どうもそれが甦らない。記憶が美化されていたのか、歳とともに味覚が落ちたのか。
イチジクの実で記憶の中にあるもうひとつのことは、実をポキッと枝から折り取るとその部分からにじみ出てくる白い樹液だ。僕はその樹液が肌に付くとかぶれてボツボツができてしまうのだ。食べても大丈夫なのに不思議だった。今もう一度それについて確かめてみようとは思わない。痒いのはごめんだ。