紙やすり

紙やすりを何枚も買ってきて、小さく切り分ける作業をした。自分で作業するときには手で千切って使うのだが、この度の物は人に配るものだけに手で千切るわけにもいかない。それでカッターナイフを使って丁寧に切り分けた。作業が進んでいくうちに、だんだんとカッターの刃に傷がつき、切れ味も落ちていく。紙やすりを切るということは、カッターにとって過酷な作業なのだ。
そんな作業を続けているうちに「ところで、紙やすりの正体は何だ」と疑問が沸いて来た。気になり出すと作業を続けていられない。紙やすりの裏を見たが書かれていない。紙やすりが入っていた薄い透明フィルムの袋を見たら書かれていた。「ガーネット」だ。ガーネットに話を進める前に袋のことだが、紙やすりってつい最近までは"裸"で売られていた。それが、先日ホームセンターに買いに行ったら薄い透明フィルムの袋に1枚ずつ入って売られていた。商品に傷がついたりするのを防ぐのが袋の目的だろうから、むしろ傷をつける側の紙やすりを袋に1枚ずつ入れて売るのは、過剰包装って気がするなあ。まあ、おかげで労せずして紙やすりのザラザラの正体が「ガーネット」だと分かったわけだが。
ガーネットの話に移ろう。ガーネットと言えば、1月の誕生石として知られる赤い色の宝石だ。別名は「柘榴石(ざくろいし)」という。石榴の実の透明な赤い色を連想させるということだろう。ここまでは紙やすりの袋を見たときに思いついた。でも、紙やすりは「茶色い」色をしている。水晶もサファイヤもいろんな色があるわけだから、ガーネットもちょっとした元素の含有量の違いで色が変わるのかもしれない。いろいろと考えているうちに作業が終わった。
気になるので拡大して見たくなった。写真は、紙やすりのクローズアップだ。照明がうまくいかずにきれいな写真にならなかったが、どんな様子かは分かる。石榴の実のような美しい赤い石などどこにも見当たらない。概ね透明か透明な薄茶色、濁った茶色や黒いものも混じっている。
ネットで調べてみると、ガーネットは割と多産するようだ。それで硬度も高いので研磨剤として使われるらしい。ただしそれは「砂」クラスのもので、宝石として珍重されるサイズになると貴重品だ。色は、茶色、赤色、紫色、橙色、緑色と実に様々だ。
どこかの国の大金持ちが、ガーネットの指輪をした手で石榴の実の色をした紙やすりを持って何かを磨いている。そんな想像をしてしまった。持て余すほど無駄に多くの財産を持っている人というものは、我々貧乏人が考えもしないような無駄遣いをしてみせるものだ。案外、彼らが紙やすりの正体を知ったとしたら、そんな超高級紙やすりを作りかねない。