縞枯山荘

ピラタスロープウェーの山頂駅を降り、しばらく歩くとT字路に突き当たる。右に行くと再びロープウェーの山頂駅に、左に行くと縞枯山や横岳への道の分岐点となる雨池峠に向かう。この日の山頂駅付近の気温は5℃で、風も吹いていて寒かった。山頂を目指す気は無かったが、もう少し歩いてみたい気もあり、僕たちは左へ曲がった。
分岐まではものすごくしっかりした豪華な木道だったが、左折した途端に木道のグレードが少々落ちた。それでも、上りと下りの両方が譲り合い無くすれ違える2列の木道になっており、普通の山道に比べたら断然歩きやすかった。明るい林間の道をしばらく歩くと、森が急に開けて草原になった。そして青い三角屋根の山小屋が見えた。縞枯山荘だ。
山荘の入り口には喫茶のメニューが掲げられており、甘酒の文字に惹かれた妻と長女はここで休んでいくことになった。僕と次女はこの先も見たいということで、雨池峠を目指した。明るい草原の道を歩くと、ちょうど草原が終わって森に変わるところが雨池峠だった。雨池峠は十字路になっており、右へ行くと縞枯山頂、左は横岳方面、まっすぐ進むと雨池へ向かう。次女に聞いてみたら、右へ行くと言って歩き始めた。右の道は水溜りが続き、ごつごつした大きな岩が続いていた。木が覆いかぶさったその道を進むとちょっと開けて明るいところに出た。ここで休憩したところで、次女に帰ろうと説得し、道を戻ることになった。
縞枯山荘のところまで戻ると、妻と長女は既に外に出て待っていた。中に入っていなかった僕は、後日、山荘はどんな感じだったかと聞いてみた。すると妻は「とうさんが居そうなところだった」と言ったので、僕は「チャールズか」「甘酒はキャロラインが作っていたか」と返した。僕は山荘の雰囲気と"とうさん"という言葉の響きから、プラムクリークにあるインガルス家を思い描いていた。でも妻は「そうじゃなくて五郎さん」と言った。どうやら、僕にとってのとうさんは「大草原の小さな家」のとうさんで、妻が思ったとうさんは「北の国から」のとうさんだった。そう言われてみれば、山荘には風力発電のプロペラが回っていた。